2月9日~10日に、日本共産党の第6回中央委員会総会(6中総)が開かれました。
この会議で、「東アジアの平和・安定・友好」にかかわる3つの国際問題(①北朝鮮問題②尖閣問題③歴史を偽造する逆流の問題)について、日本共産党の立場が明らかにされました。政府が日本国憲法を堅持してこそ、懸案の3つの国際問題が解決できるし、日本は世界とアジアで生きていける。このことを、6中総は明らかにしました。今回は、「歴史の偽造」をめぐって、憲法がもつ大きな力について考えてみます。
首相就任以前、安倍晋三氏は、日本軍「慰安婦」問題についての軍の関与と強制を公式に認め、謝罪した「河野官房長官談話」(1993年8月)の見直しを主張してきました。日本共産党の志位委員長は、安倍内閣発足後最初の代表質問(1月31日)で、「軍の強制性を立証する文書は見つからなかったが、『慰安婦』とされた多くの女性の証言の真実性から事実と認定した」という、「河野談話」当時の石原信雄官房副長官の証言を引用し、「文書がないから強制はなかった」という議論は成り立たないと追及しました。首相はこの指摘に反論できず、「首相としてこれ以上申し上げることは差し控え、官房長官による対応が適当だ」と答弁しました。
一方、2月7日の国会で、民主党の前原誠司元政調会長が、首相の志位委員長への答弁に不満を示し、「安倍総理が自ら政治信念としてやってきた問題だ」、首相の立場で「河野談話」を見直せと要求しました。これに対して首相は、あらためて「いたずらに外交・政治問題にするべきではない」と答えました。
日本国憲法は、「前文」で 、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し......この憲法を確定する」と宣言しています。すなわち、かつての日本による世界とアジアへの侵略戦争と植民地支配の反省が、憲法の原点です。志位委員長の質問は、安倍氏の「持論」を政府の方針にさせない立場でおこなったものです。憲法の原理に立った志位質問だったからこそ、安倍氏は「持論」を「封印」せざるを得なかったのです。6中総は、この答弁をふまえて、「首相がこの言明を守り、この問題での逆流を国政に持ち込むことを断念することを、強く求め」ました。一方、「持論」を「国政に持ち込め」と要求した前原氏の憲法感覚の危うさは、黙過できません。
日本国憲法に立脚した志位質問と、それへの安倍首相の答弁で、ホット胸をなでおろしたのは、おそらくアジアに進出した企業であり、そこで働く人々ではなかったでしょうか?
「河野談話」の証言者=石原信雄元官房副長官が、2月10日付の「しんぶん赤旗」日曜版の取材に答えてくれました。ここで石原氏は、「河野談話」を出すに当たっては、日本政府が任命した調査官が16人の「元慰安婦」から中立的な環境でヒアリングをおこなった結果、「これは作り話じゃない、本人が意に反して『慰安婦』とされたことは間違いない」という内閣の共通の認識が生まれ、「河野談話」は「内閣の意思」として出したものだと明言しました。そして、志位質問にたいして、首相が「自分の意見を『差し控える』と述べ、『この問題を政治問題、外交問題化させるべきではない』と答弁されたことは(日韓関係が未来志向で前進するためにも)たいへん良かった」と述べまています。
一連の経過は、日本は、憲法を堅持してこそ世界とアジアで堂々と生きていけることを示したのではないでしょうか。安倍首相のもう一つの「持論」=改憲の企みを許さないために、力を合わせましょう。
(2013年2月12日)