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京都府委員長が若い世代に語る。 憲法と日本共産党

《虚構の多数に憲法の運命をゆだねられるか?》 

  夏の参議院選挙を前に、「憲法96条改定」が国の政治の焦点になってきました。
  今開かれている国会で、安倍首相が「(改憲は)まず96条から始める」と答弁しました。 安倍首相を支える自民党・公明党だけではなく、民主党・維新の会・みんなの党の野党3党の議員が参加する「憲法96条研究会」が発足しました。民主党元代表の前原誠司氏は、「自民、公明の与党にプラスしてほかの政党が協力しなくてはなりません」(「読売新聞」3/7付)と、「96条改定」の流れをリードしています。
  憲法96条は、憲法改正の手続きを定めた条項です。「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」と定めています。普通の法律は国会の過半数だけで決められますが、こと憲法に関しては、3分の2の発議要件と国民投票という高いハードルを設定しているのです。
 「96条改定」を主張する政党は、この高いハードルを普通の法律並みに変えようというのです。橋下徹・維新の会共同代表は、「読売新聞」のインタビューに(2月28日付)答えて、次のように発言しています。「(改憲を)実行するための装置をきちんと作らないといけない......だから、96条をまず改正して、発議要件を緩和し、憲法改正を夢物語から現実の話にしなければならない」「今の段階で憲法の中身を議論すれば3年や4年は十分にかかる。ところが......憲法改正を是とする政治勢力が衆参両院それぞれにおいて3分の2以上の議席を確保し続けることはたいへん難しい」。
 今、改憲をハッキリと掲げているのは、自民党(衆院議席が294)・公明党(同じく31)・維新の会(54)・みんなの党(18)の4党で、合計すると397議席。衆院議席(480)の83%、3分の2を大きく超えます。一方、参院では、これらの党の議席(117議席)は48.3%です。橋下氏は、次の参院選でこれを3分の2にして、96条をまず変える。両院で3分の2を占める続けることは至難のワザなので、今回の参院選のチャンスを逃してはならない。この機会に改憲発議の要件を過半数にしてしまえば、今後は、いつでも簡単に改憲ができるようになる。このように主張しているのです。
  橋下氏の主張は、「憲法とはそもそも何か?」の理解に欠けるものです。
 戦前の憲法と今の憲法の根本的な違いは、「国家権力が国民を縛るための憲法」(明治憲法)なのか、「国民が国家権力を縛るための憲法」(今の憲法)なのか、という点にあります。戦前の憲法は、天皇が元首、国民は「臣民」=天皇の家来でした。この明治憲法のもとで日本が侵略戦争と植民地支配に走り、日本国民もアジアの人々も抑圧し、命を奪った痛恨の歴史を深く反省して、「国民主権」=「国民が主人公」の原理を決めたのが、今の日本国憲法です。
 憲法96条が、国会による改憲発議のハードルを高くしているのは、この「国民主権」の原理に基づいています。96条は、主権者である国民によって縛られるべき政治権力が、そのときどき都合のよいように憲法を変えることを防ぐための措置です。
 権力の中心である内閣は、国会の過半数で選ばれます。もし、改憲発議が過半数でできるとなれば、橋下氏が言うように、権力は、そのときどき都合のよいように改憲案をいくらでも発議できるようになります。
  「そうなっても、国民投票があるから良いではないか?」という意見もあるかもしれません。しかし、国民投票は、国会が示した改憲案にイエスかノーかを答えるだけです。しかも、2007年に決められた「国民投票法」は、公務員の運動を大幅に制限するなど、国民の運動をあれこれと規制しています。また、国民投票成立のための投票率の下限を決めていません。極端に言えば、投票率1%でも改憲が決められるのです。国民投票のときに国民の意見表明や運動は制限しておいて、「読売新聞」のように、マスメディアの改憲案を大々的に報道するのは野放しとなれば、真の国民的議論は期待できません。橋下氏は、「中身を議論すれば、3年や4年は十分にかかる」のを悪く言いますが、主権者である国民が、それこそ「中身を十分な時間をかけて議論」できることこそ、国民主権をつらぬく立場ではないでしょうか?「国会が決めた。さあ、国民はイエスかノーかを言うだけだ」というのは、「改憲先にありき」の暴論と言わなければなりません。

  今回の総選挙の小選挙区では、自民党は43%の得票率で79%の議席を獲得しました。3年前の総選挙では、逆に民主党が47%の得票率で74%の議席を獲得しました。また、今回の総選挙での自民党比例代表選挙の得票率は27%(有権者全体を分母にすれば15%)しかないのです。国民の15%しか支持を得ていない自民党を中心とした内閣=権力が、議席では衆参とも3分の2を得て96条を改定し、今後も選挙での国民の審判と関係なく、いつでも改憲できるようにしようというのが、「96条改定」論です。こんなことを許さないためにこそ、憲法は本来、改憲発議のハードルを高くしているのです。
 それにしても、この事態は、あらためて小選挙区制を中心とした選挙制度の弊害を浮き彫りにしています。主権者である国民の意志を鏡のように映す民主的な選挙制度にして、はじめて憲法の原理=「国民主権」が本物になるのではないでしょうか。

  日本共産党は、「天皇が主人公」の時代から、「国民が主人公」の立場で、男女の普通選挙権などを求め、また侵略戦争に命がけで反対した政党です。戦後は、憲法を変えろと繰り返し日本政府に迫るアメリカの圧力とたたかってきた政党です。
 小選挙区制のおかげで得た虚構の多数をたのんで「国民主権」の原理に挑戦する勢力に、憲法の運命をゆだねることはできません。「参議院でも3分の2」なんて、とんでもありません。憲法の中身について意見の違いはあっても、憲法の大原則である「国民主権」=「国民が権力を縛る」大原則をまもるために、ご一緒に力あを合わせましょう。
(2013年3月12日)
  
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