憲法をめぐるこの1週間の最大のトピックは、古賀誠自民党元幹事長が「しんぶん赤旗」日曜版6月2日号に登場し、「96条改憲に大反対」「憲法の平和主義は『世界遺産』」と述べたことです。スポーツ紙も含め、ほとんどの新聞がこの記事をフォローしました。
3日付の毎日新聞コラム「風知草」は、「反共産主義の保守同盟という自民党の原点を顧みれば、これはやはり事件」「この出来事は、自民党反主流派が、もはや党内には発信の拠点を持ち得ない現実と呼応している」と分析し、「改憲先行一色」の今の自民党内には「ポチ(権力者に媚びる者を揶揄する蔑称)しかいない」と、皮肉っています。
6月1日のMSN産経ニュースには、政治部編集委員の高木桂一氏による「これぞ保守本流?!自民党重鎮がまた『赤旗』で吠えた」という一文が掲載されています。
高木氏は、「赤旗」日曜版の古賀氏へのインタビュー全文を紹介した上で、最後に、古賀氏や、1月の「赤旗」日曜版に登場した加藤紘一氏、河野洋平氏について、「彼らは今や共産党の〝御用達政治家〟のようである」として、「古賀さん、加藤さんは今からでも自民党から完全に離れて共産党員になったらいい」と、筋違いの論難で結んでいます。
「96条改正反対、過半数」。これは、共同通信世論調査(3日付京都新聞)の見出しです。同調査によると、国会による改憲発議要件を衆参両院の3分の2以上の賛成としている現憲法の高いハードルを「過半数」に下げる「96条改正」について、調査するごとに「反対」が増え、「賛成」が減っています。「反対」は、40.2%(3月)→46.3%(4月)→48.6%(5月)→51.6%(今回)とついに過半数を超え、逆に「賛成」は、48.1%(3月)→42.7%(4月)→41.5%(5月)→37.2%(今回)と、4ヵ月で賛否は大きく逆転しました。自民党支持者にも慎重論(「賛成」47.2%「反対」41.5%で、5月調査と比べて、「賛成」が7.5ポイント下がった)が広がっています。
京都大学人文科学研究所長の山室信一教授は、安倍首相が「96条改憲」を持ち出したことによって「一つよい効果が生まれている」として、次のように述べています。
「憲法は、国民を特定の価値観で縛るものではなく、国民が国家権力を縛るものだという『立憲主義』の考え方が認知されてきたことだ」(朝日新聞5月26日付京都市内版)。
また、山室教授は、「9条は日本の伝統」として、次のように述べています。
「マッカーサーが(憲法)施行後の議会での改正を認めたのに、吉田茂首相が『必要なし』と明言した」「9条は単に押しつけられただけではない。幕末の儒教者で政治家の横井小楠らは、世界国家や世界憲法の構想を主張した。戦前からつながる9条への思想的水脈だ。思想家の中江兆民は文化や学術で世界に貢献しようと考えた。日本の高い文化や技術の破壊は『人類の損害』で、破壊者は国際社会から非難を受けるだろうと。内村鑑三も、軍事予算を世界の鉄道網や大学建設にあてれば、尊敬され、侵略を受けないと訴えた」「これは立派な伝統で、歴史的風土だ。こうした主体的な側面を見ようとしない態度こそ『自虐史観』。悲惨な戦争の後、国民が現行憲法を受け入れ、70年近く戦争をしなかった非戦の歴史こそ伝統と言える」。
「産経」の高木氏は、古賀・加藤両氏にたいして、「革命政党の広報紙で、〝身内〟の足を引っ張るがごとく吠えることが保守本流というのか」と毒づきました。さらに高木氏は、「自民党の元実力者が(ノコノコと)赤旗に登場することで、なおも固い鎧をまとっている共産党が『開かれた政党』だという錯覚も国民に抱かせかねない」と、八つ当たりしています。高木氏のこの非難は、何より古賀氏や加藤氏に対して失礼です。また、日本共産党をいかにも陰謀勢力であるかのように描く攻撃です。さらに、権力を監視するというジャーナリズム本来の精神を捨て去った「産経」の姿を天下に示したものです。
日本共産党は、確かに「革命政党」です。私たちがめざす当面の革命は、「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」(日本共産党綱領)改革です。党名の通り、将来の社会主義・共産主義をめざしますが、それは、〝ソ連型〟とは無縁の社会=搾取の廃止、労働時間の短縮を条件として「社会のすべての構成員の人間的発達を保障する土台」となる社会であり、「真に平等で自由な人間関係からなる共同社会」(同)です。その変革の道も国民多数の支持で議会を通じて進めます。公然と掲げられた日本共産党のこの綱領路線のどこに、「固い鎧」があるというのでしょうか?
「国民の利益実現・苦難解決」が日本共産党の行動原理です。「9条を守ろう」「96条改憲反対」の一点で共同できる人は、自民党の人であろうと、みんなウェルカムです。
護憲派が勢いづき、改憲派がいらつき、焦っています。〝押せ押せ〟です。議論をおこし、押して押して、改憲派を土俵の外に押し出すのが、参議院選挙です。
「96条改憲」反対の世論づくりに貢献する「しんぶん赤旗」や京都民報を、ぜひ多くの方にご購読いただきたい。参院選で、護憲の国民的共同の一翼を担ってがんばる日本共産党の比例代表5人と、京都選挙区・倉林明子さんを、必ず国会へ。
東京都議選投票まであと20日。参院選公示まで、あと1ヵ月。エンジン全開です。(2013年6月4日)