先日、学生向けに学費の学習会を行う機会がありました。その準備のために作成したメモをもとに、学生の切実な実態や高学費問題の背景、この間の情勢の変化など簡単にご紹介します。終わりに参考にしたサイトのリンクを貼っていますので興味のある方はぜひのぞいてみてください。
高学費、奨学金返済の負担が重くのしかかる ―切実な学生の実態
全日本学生自治会総連合(全学連)がアンケートや聞き取り調査をもとに作成している「学費・雇用黒書」。この黒書に書かれている学生の実態は深刻です。
「兄2人とも学費の負担で自主退学し、友人も同じく自主退学をした」
「将来の返済を考えると奨学金を借りたくはないが借りないと大学に行けない」
「親の給料が不況のあおりを受け今までの半分になってしまった。学費ねん出のため土地を売った」
「家庭の経済負担を考え、アルバイトを始めた。週5日のアルバイトで稼いだ給料で食費や学業にかかるお金をねん出している」
国際的に見ても異常 ―なぜこんなに高いのか
日本の大学の学費は国立大学で約80万円、私立大学で約130万円にのぼります(初年度納付金)。また、日本の奨学金制度はほとんどが貸与制でそのうち有利子の奨学金が7割を占めています。国際人権規約A規約13条2項cには『高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、 能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること』と明記されています。国際的には教育を無償化していこうという流れなのに、授業料 も無償でない、給付制奨学金制度もない国は日本だけです。
なぜ日本の学費はこんなに高いのか。そこには高等教育予算が極端に少ないという問題が あります。GDP(国内総生産)に占める高等教育予算の政府支出を見るとOECD諸国平均が1.0%に対して日本は0.5%しか支出をしていません。国立 大学運営費交付金は2004年の法人化以降、毎年1%ずつ削減されています。私立大学等経常費補助に関しては「私立大学の経常費の2分の1を国庫補助とする」とされていますが現状は経常費の11%(平均)にまで落ち込んでいます。
学生、父母、教職員などの国民各層の運動とともに ―この間の情勢の変化
1979年に政府が国際人権規約を批准して以来30数年、国民運動が世論を作り、社会や政治を動かしてきました。
2009年の総選挙では多くの政党が給付制奨学金の創設を公約に掲げ、2010年1月には鳩山首相(当時)が「国際人権規約13条2項の留保撤回を政権の具体的目標とする」と表明しました。この表明は歴代首相としては初めての表明でした。
また、経済界からも「学生支援機構奨学金の第一種(無利子)拡充、第二種(有利子)廃止」や「新たに『給付制奨学金』をもうけるべき」「卒業後の年収が低け れば返済額を免除する制度を設けることを検討すべき」「入学金は廃止、または授業料に均等負荷」「私学生への直接助成を」と提言しています。
2012年2月には日本共産党・宮本岳志議員が衆院予算委員会で国際人権規約の留保を批判。それに対し民主党・玄葉光一郎外相は国際人権規約の留保撤回を 表明しました。そして2012年9月、留保撤回を閣議決定し、国連に通告しました。ようやく日本は『教育無償化をすすめる国』となったのです。
教育は無償、奨学金は給付型に ―お金の心配なく学べる日本社会へ
国際人権規約を留保撤回したことは大きな前進ですが、中身が伴っていないのが今の日本の現状です。先に述べたようにまだまだ学費は高く、高等教育予算が極端に少ない、経済的理由で進学や就学を断念する若者が後を絶ちません。
それにも関わらず、政府が9月に発表した2013年度予算概算要求では、文部科学省が昨年初めて要求した大学等の給付制奨学金について、要求自体を見送って います。奨学金事業予算は拡大しましたが無利子奨学金が3万6000人増に対して、有利子奨学金が6万3000人増と、全体としてローン化を一層すすめる ものとなっています。
私立大学等経常費補助は82億1500万円の増額要求となっていますが、経常費の11%にまで落ち込んだ国庫助成を抜本的 に引き上げるにはまだまだ不十分です。国立大学運営費交付金は相変わらず削減されており、前年度予算比でマイナス156億円(総額1兆1267億円)の要 求となっており、1.38%の削減です。概算要求時に前年度比マイナスで計上したのは国立大学独立法人化以降初めてのことです。
国際人権規約を留保撤回したからといって自動的に学費無償化がすすむというわけではありません。引き続き国民運動の力で学費負担を軽減し、誰もがお金の心配なく学べる社会の実現しましょう。
全学連(全日本学生自治会総連合)ニュース
http://blog.livedoor.jp/zengakuren/
高校・大学無償 留保を撤回 国際人権規約 日本政府が通告
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-14/2012091401_01_1.html
無償化が世界のルール/JCP若者ネットワーク
http://www.jcp.or.jp/youth/gakuhi/index.html
図表でみる教育 OECDインディケータ(2011年版)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2011/10/07/1311502_8_1.pdf
奨学金事業の充実:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shougakukin/main.htm
全日本学生自治会総連合(全学連)がアンケートや聞き取り調査をもとに作成している「学費・雇用黒書」。この黒書に書かれている学生の実態は深刻です。
「兄2人とも学費の負担で自主退学し、友人も同じく自主退学をした」
「将来の返済を考えると奨学金を借りたくはないが借りないと大学に行けない」
「親の給料が不況のあおりを受け今までの半分になってしまった。学費ねん出のため土地を売った」
「家庭の経済負担を考え、アルバイトを始めた。週5日のアルバイトで稼いだ給料で食費や学業にかかるお金をねん出している」
国際的に見ても異常 ―なぜこんなに高いのか
日本の大学の学費は国立大学で約80万円、私立大学で約130万円にのぼります(初年度納付金)。また、日本の奨学金制度はほとんどが貸与制でそのうち有利子の奨学金が7割を占めています。国際人権規約A規約13条2項cには『高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、 能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること』と明記されています。国際的には教育を無償化していこうという流れなのに、授業料 も無償でない、給付制奨学金制度もない国は日本だけです。
なぜ日本の学費はこんなに高いのか。そこには高等教育予算が極端に少ないという問題が あります。GDP(国内総生産)に占める高等教育予算の政府支出を見るとOECD諸国平均が1.0%に対して日本は0.5%しか支出をしていません。国立 大学運営費交付金は2004年の法人化以降、毎年1%ずつ削減されています。私立大学等経常費補助に関しては「私立大学の経常費の2分の1を国庫補助とする」とされていますが現状は経常費の11%(平均)にまで落ち込んでいます。
学生、父母、教職員などの国民各層の運動とともに ―この間の情勢の変化
1979年に政府が国際人権規約を批准して以来30数年、国民運動が世論を作り、社会や政治を動かしてきました。
2009年の総選挙では多くの政党が給付制奨学金の創設を公約に掲げ、2010年1月には鳩山首相(当時)が「国際人権規約13条2項の留保撤回を政権の具体的目標とする」と表明しました。この表明は歴代首相としては初めての表明でした。
また、経済界からも「学生支援機構奨学金の第一種(無利子)拡充、第二種(有利子)廃止」や「新たに『給付制奨学金』をもうけるべき」「卒業後の年収が低け れば返済額を免除する制度を設けることを検討すべき」「入学金は廃止、または授業料に均等負荷」「私学生への直接助成を」と提言しています。
2012年2月には日本共産党・宮本岳志議員が衆院予算委員会で国際人権規約の留保を批判。それに対し民主党・玄葉光一郎外相は国際人権規約の留保撤回を 表明しました。そして2012年9月、留保撤回を閣議決定し、国連に通告しました。ようやく日本は『教育無償化をすすめる国』となったのです。
教育は無償、奨学金は給付型に ―お金の心配なく学べる日本社会へ
国際人権規約を留保撤回したことは大きな前進ですが、中身が伴っていないのが今の日本の現状です。先に述べたようにまだまだ学費は高く、高等教育予算が極端に少ない、経済的理由で進学や就学を断念する若者が後を絶ちません。
それにも関わらず、政府が9月に発表した2013年度予算概算要求では、文部科学省が昨年初めて要求した大学等の給付制奨学金について、要求自体を見送って います。奨学金事業予算は拡大しましたが無利子奨学金が3万6000人増に対して、有利子奨学金が6万3000人増と、全体としてローン化を一層すすめる ものとなっています。
私立大学等経常費補助は82億1500万円の増額要求となっていますが、経常費の11%にまで落ち込んだ国庫助成を抜本的 に引き上げるにはまだまだ不十分です。国立大学運営費交付金は相変わらず削減されており、前年度予算比でマイナス156億円(総額1兆1267億円)の要 求となっており、1.38%の削減です。概算要求時に前年度比マイナスで計上したのは国立大学独立法人化以降初めてのことです。
国際人権規約を留保撤回したからといって自動的に学費無償化がすすむというわけではありません。引き続き国民運動の力で学費負担を軽減し、誰もがお金の心配なく学べる社会の実現しましょう。
全学連(全日本学生自治会総連合)ニュース
http://blog.livedoor.jp/zengakuren/
高校・大学無償 留保を撤回 国際人権規約 日本政府が通告
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-14/2012091401_01_1.html
無償化が世界のルール/JCP若者ネットワーク
http://www.jcp.or.jp/youth/gakuhi/index.html
図表でみる教育 OECDインディケータ(2011年版)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2011/10/07/1311502_8_1.pdf
奨学金事業の充実:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shougakukin/main.htm
コメントする