小児科医Oです。 前回「うたごえ」について書いた流れでもう一つ。
この数年、週に1日だけ綾部の病院のお手伝いに通っている。
行き帰り、運転しながら聞いているのは「雨」「月光とピエロ」「水のいのち」「筑後川」「蔵王」・・・。若かったころに歌ったり、コンサートに行って聴いていた合唱曲の数々だ。
今回も限られた人にしか興味の持って
いただけない話題で恐縮とは思いつつも、
筆を続けさせていただきたい。
学生時代には男声合唱をかじった。自分ではかなりのめり込んだつもりではいたが、結局中途半端なままに遠ざか
ってしまっている。だからこうした曲を聴くと、若かったころ
何かしら、しゃにむに追いかけていたころの自分を思い出す。
女声合唱はピアノ伴奏と一体になってピリッと張りつめたところがいい。
しかも不思議と女声合唱曲や混声合唱曲はメッセージ性がある。
「降りしきれ雨よ、降りしきれ、すべて許しあうものの上に、また許しあえぬものの上に」、「行け、旅に、いまこそ、憧れにになわれて」。
今でも心を奮いたたせてくれる。
男声合唱はバス・バリトンの重厚な下支えがあって、その上に鋼のようなテナーが乗るので、それだけで豊かであり、それだけで完結していて伴奏を要しない。それに男声合唱曲には日本を代表する詩人の詩に曲をつけたものが多く、ことばを大切にした歌が多い。
心が洗われるというのか、落ち着いた気分にしてくれる。
ひいき目ながら、芸術性においては男声合唱のほうが数段優れていると感じているが・・・。「富士山」の後段など聴くたびに元気をもらう。
運転中にも関わらず、思わず大声で歌っているし、ハンドルから離れた右手はマエストロである。
京都にもすぐれた合唱団がいくつもある。働き始めたころは同志社大学のグリークラブが毎年年末に開く「メサイア」をよく聴きに行ったが、今はすっかりご無沙汰だ。いつか余裕が出てきたら市民合唱団にでも入れていただいて、青春時代にやり残した合唱へのリベンジをなしとげたいと思ったりしているが、おそらくこんな心構えでは実現は無理に決まっている。
同僚のT医師や昔なじみのI医師は、超多忙ななか、バイオリンの練習にいそしんでいる。思い立ったらいろいろ考えすぎずに行動に移すこと。このフットワークの軽さがなければ人生を豊かにすることもできないのかもしれない、など思いながらも重い腰は上がらない。
(小児科医あらため、マエストロのOでした)
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