なぜこの年齢層の男性かというと、日本の予防接種行政の落とし穴で、この年齢層の男性は風疹の予防接種を受ける機会を失していたからである。
少しこまかくなるが、日本では2006年以降、はしか・風疹予防接種が定期接種となり、1歳以降の子どもたちは基本的にこれらのワクチンを受けることになった。今の年齢でいえば8歳から9歳以下の子どもたちにあたる。それまでは1995年から1歳以降の子どもたちに風疹を受けることが進められてはいたが、接種者は多くない。さらにさかのぼると、1977年から1995年の間は中学2年生の女児だけが風疹ワクチンを接種していた。またかつては数年周期でしていた時代があったので、一定年齢以上では風疹の免疫を有している男性も少なくない。こうしたことから20歳代から40歳代が最も危険な年齢にあたっていると推測されている。
さて風疹の怖さは、かかった本人にではない。妊婦さんがり患して、特に妊娠前半であれば生まれてくる赤ちゃんに難聴を始め多彩な障がいを及ぼすことにある。
ならば妊婦さんに免疫をつけておけばよいかという話になるが、実はそう簡単にはいかない。ワクチンを接種していても効果が減弱してしまってかかることがあるし、かつて風疹にり患していた場合でさえもかかることがある。さらにややこしいのは不顕性感染と言って、明らかな風疹症状(発疹、発熱、耳の後ろのリンパ節腫脹)がなくても風疹にかかっていることもある。
せんじ詰めれば地域から風疹をなくすように、すべての人がワクチンをうつしか方法はない。まず当面は、子どもたちにはその手立てが存在しているので、妊娠を考えている男女で風疹抗体価がしっかり上がっている女性を除けば、優先してワクチンを受けることがすすめられる。
注意点は二つだけ。妊娠中の女性は接種できないことと、接種後2か月間は避妊を守っていただくこと。あとはかかっているかどうかわからなくてもまったくさしつかえない。
なお現在風疹ワクチンが品薄になってきている。多くの医療機関は、はしか・風疹混合ワクチンを使っている。これはまったく合理的なことで、前述のような理由から成人男女ではしかの抗体価が下がってきている人は少なくない。ただし若干高価になる。
先日京都府がワクチンの費用助成を決めた。しかしこれが本当に意味を持つのは京田辺市など市独自で女性を決めている自治体のみであり、府が1/3、市が1/3、ワクチンを受ける本人が1/3というシステムなので、京都市のように市が助成を決めていないところでは役に立たない。京都市の動きは迅速さにかける。すでに今年に入って京都市内だけで70名以上の風疹患者が発生しており、京都市への働きかけが重要となっている。
(小児科医O)
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