現場の声あつめ、科学を生かす政治こそ/「コロナ」「笹子」「原発」
2020年5月20日 渡辺和俊
本日付「朝日」の「多事奏論」で、原真人編集委員が冒頭次のように述べ、田村智子日本共産党参議院議員にインタビューしています。
「なぜ1年も前に……『桜を見る会』疑惑で安倍晋三首相を追及して名をはせた共産党の田村智子氏。その氏が『桜』追及より前の昨年4月、参院委員会で国立感染症研究所について『いま体制が弱化すれば国民の生命や健康への重大な脅威となる』と政府に厳しく質問している映像が最近、SNS上で話題になった」。
「まるで、新型コロナウイルス危機を予言していたかのような質問でしたね」との原氏の問いに、田村氏は、次のように答えまています。
「ここ20年、世界では重症急性呼吸器症候群(SARS)など大きな感染症が立て続けに流行しており、日本でも危機がいつ起きてもおかしくありませんでした。感染研は米国で言えば疾病対策センター(CDC)、国立保健研究所(NIH)、食品医薬品局(FDA)の3機関の役割を一手に担う日本の感染症対策の中核。ところが予算や人員は削減されっぱなしで現場は疲弊し、悲鳴があがっていました」。
この発言を受け、原氏は、「田村氏は7年前から国会でこの問題をとりあげ、改善を求めていた。だが、現政権は計8回の政府予算編成で対策を軽んじてきた。そのツケが今回ってきている」と、公務員削減を強行し、感染研の「体制弱化」を招いた政治の現状を批判しています。
私は、この記事を読んで、2つのことを思い起こしました。
2012年、山梨県の中央道笹子トンネルで天井落下事故が起こり、9人の尊い命が失われました。直後にこの問題を国会で取り上げた穀田恵二共産党衆議院議員は、「過去5年間で高速道路三者で必要な補修件数が3倍なのに対し、維持修繕費は横ばいとなっている」「収益優先で回収を後回しにしてきた責任が問われている」と厳しく指摘、太田昭宏国公相(当時)も「本来なら維持補修に費やさなければならない」と答弁しました。
実は、この問題、穀田議員は、事故が起こって初めて指摘したのではないのです。「官から民へ」と「構造改革」が叫ばれ、2005年に日本道路公団が民営化されたもとで、当時の小泉政権が高速道路の「改修・更新費用の3割減」を掲げました。この政府方針に対して、例えば2008年の衆院国土交通委員会で、穀田議員は「紀淡海峡大橋」など「六大海峡横断道路」のようなムダな大型開発より、高速道路や海峡トンネル、新幹線など既存インフラの老朽対策、メンテナンスに予算をシフトすべきだ、そうしないと重大事故につながりかねないと、厳しく指摘していたのです。
さらに思い起こすのは、よく知られている吉井英勝共産党元衆議院議員の国会論戦です。
吉井議員は、自らも原発問題の専門家として、大地震に伴う津波の「押し波」によって「電源喪失」が起こる危険、また「引き波」によっても冷却水を取水できなくなる危険があり、その結果、原発の冷却機能が喪失され、「炉心溶融」や「水蒸気爆発」、「水素爆発」の恐れがあると厳しく指摘しました(2006年)。この指摘をまともに受け止めず、津波対策を怠ったのが第1次政権当時の安倍首相と東京電力でした。吉井議員の指摘をまともに受け止めていたら、あの重大事故は防げたかもしれません。
この3つの事例に示されるように、日本共産党は、取り上げるべき課題について専門家の意見を聞き、とことん調べ尽くして学問的到達点を学ぶとともに、関連する「現場」の実態をつぶさに調べて、質問します。
未曾有の新型コロナ危機をめぐって、あらためて「政治」における「現場」と「科学」の大切さを考えさせられました。今からでも遅くない。自公政権は、これまで「効率」と「利益」優先で、「現場」と「科学」に背を向けてきた怠慢を厳しく反省し、何よりコロナ感染の“第2波”“第3波”に備え、医療現場の声を汲み尽くし、科学の声に耳を澄まして、感染症から国民の命と健康、暮らしを守る責任を果たすべきです。